地図の見方と選び方
登山やトレッキングでは地図は欠かせません。自分が今どこを歩いているか、周囲の状況はどうなっているかなど、常に把握しておくことが大切です。
それを教えてくれるのが地図です。
地図は正確で見やすいものを選びます。国土地理院発行の地図は国が作成したものなので、あらゆる場所のものを発行しているので間違いはないでしょう。
事前に記号や等高線など、地図から情報を読みとれるようにしておけば、いざという時に安心です。現在地と目的地への方向がわからなくなる前に【地図を見る】ことが一番重要!!常に地図と照らし合わせながら行動しましょう。
このページでは、地図とコンパスの基本的な使い方を説明します。
- 磁北線の引き方
- 目標物の調べ方
- 目的地への方向の取り方
- 現在地の調べ方
事故の原因は道迷い?
警察庁生活安全局地域課【平成20年中における山岳遭難の概況】より
H20年の山岳遭難事故件数は、1,631件(1,993人)。その内、死亡・行方不明者は、281人。
目的別に見ると、登山( ハイキング、スキー登山、沢登り、岩登りを含む) 、山菜・茸取りが多く全体の87.9 % を占めています。
また、態様別にみると、道迷い、滑落、転倒が多く全体の71.6%を占めています。道に迷わなければ、滑落なども防げる可能性があったかもしれません。
安全登山のためには「道迷い」を防ぐことが大変重要となってきます。
登山地図と地形図
地形図(大雪山付近)
国土交通省国土地理院が発行している地図。
2万5000分の1の地形図は、細かな地形まで読み取れるので山中で現在地を知るのに欠かせない。見慣れてくると、地形や山容がある程度立体的にイメージできるようになる。
登山地図(大雪山付近)
民間の地図出版会社が、国土地理院の地形図を基に、登山ルート・コースタイム・テント場・危険な箇所などを追加して登山向けに編集したもの。
登山地図は、ある程度広い範囲で把握したりするのには向いているようですが、道の分岐点などで尾根や沢の地形などから現在地を確認して【道迷い】を防ぐのには不向きのようです。登山地図をメインに使って、登山中の要所で地形図上で現在地を確認しながら歩くのがいいのでしょうか。
初心者がいきなり本格登山に出かけることもなく、登山地図のほうがルートや所要時間などが記入されている分、分かり易いかもしれません。
地図とコンパスは必需品
入り口から出口まで道標が設置されているようなコースであれば、ほぼ問題なく帰って来れますが、台風や大雨で道標が倒れていて進むべき方向がわからなくなったりします。
また、天気によってはガスの影響で視界が悪くなり、道標を見失ったり方向感覚が失われるような状況なども考えられます。
そんな目にあわないための地図とコンパス。ガイドブックや地図は最新のものを利用して、天気が崩れそうな時は中止するという予防も大切です。
磁北と真北
本当の北(真北)の方向と、コンパスが示す北(磁北)ですが、実は合致していません。この磁北と真北の差を磁気偏差といい、日本では緯度によって異なりすべて西に5~10度ずれています。各地形図にはその場所の磁針方位が記載されてます。
この補正のために、コンパスが指す磁北より東にずらせて測らなければなりません。
※このズレを偏差(西偏)といいます。
コンパスの出番
いくら正確な地図でもコンパスがなければ使えないです。
コンパスを持つならSILVA社製のシルバコンパスを購入しましょう。
コンパスの持ち方
- 近くに磁力を強い磁力のあるものが無いか注意する
- なるべく高い位置で水平に持ちます
- 目標物の方位を調べるときは、目の前で合わせて効き目で見る
目の前で見るのは慣れるまで難しいので、ここでは胸の前(目線の下)での持ち方で説明してます。
磁北線を引こう
磁北線とは、地図上引く磁北の線。コンパスを地図上に置く時の基準線になる。
偏差を確認する
偏差は地形図に「西偏○度○分」という形式で書かれています。
まずこの数値を確認してください。
偏差の表記は時間表記と同じ60進法です。1度は60分。7度30分なら7.5度です。
- 地形図の右下隅に分度器をセット。偏差分左にずれた箇所に印をつけます。
- 定規で地形図の右下隅と分度器でつけた印と結ぶ線を引きます。
- 上で引いた線と平行に左へ線を引いていきます。
- この線が磁北線です。
磁北線は細く薄い色で引いたほうが地図の邪魔にならずいいです。また、全体に引かずに必要なルート付近のみのほうが見づらくなくいい場合もあります。
慣れてくれば入山前に現地で書くことも出来ますが、慣れないうちは自宅にて記入して行くほうが正確に引くことが出来ます。
あの山を調べよう
遠くに見える場所が地図上のどこなのかを調べるには、現在地から見える方位から地図上に印をします。
- コンパスを胸の前で持ち、目標物に矢印を合わせます。
- 目標物に合わせた状態でダイヤルを回して磁針の方向(磁北)にN極を合わします。ダイヤル内の縦線が磁針と平行になります。
- ダイヤルが動かないように地図上に置き、現在地をコンパスの横辺に、ダイヤル内の縦線を地図上に書いた磁北線に合わす。赤い矢印の方向に目標物があります。
目的地の方位を調べよう
目的地の方向を調べるには、地図上で方位を調べその数値方向へ進めばいいのですが、シルバコンパスなら、セットした後は矢印方向に進めばいいです。
- 地図上に現在地と目的地に線を引き、コンパスを当てます。
- コンパスを当てた状態でダイヤルを回し、N極と磁針を合わします。ダイヤル内の線が磁北線と平行になります。
- コンパスを地図上から離して胸の前に置きます。磁針とダイヤルのN極が合うまでその場で体を回転します。磁針とダイヤルのN極が合った時、矢印の方向が目的地方向です。
磁針とダイヤルのN極を合しながら進むのがポイントです。そうすれば常に矢印方向が目的地となります。
ただし、進行ルートは常に真っ直ぐとは限りません。要所要所で調整しながら進みましょう。
現在地を調べよう
今いる場所がわからない!そんな時でも目印となる物(尾根、ピーク、山小屋など)が2つ以上見えていたら、簡単に調べることが出来ます。
- 最初の目印Aの方向に立ち、胸の前でコンパスの矢印を向けます。
- その状態でダイヤルを回して、N極と磁針を合わします。
- 地図上でコンパスの側辺を目印Aにあて、N極(ダイヤル内縦線)を磁北線と平行になるように回してセットし、線を引きます。
- 次に目印Bの方向に立ち、胸の前でコンパスの矢印を向けます。
- その状態でダイヤルを回して、N極と磁針を合わします。
- 地図上で目印Aの線を引いたように目印Bの線を引きます。線の交差する地点が現在地です。
目標物が2つの場合は同じ作業を繰り返します。目標物が多いほうが精度は高くなります。
3点目標物で行った場合、線の交わるところに三角形が出来てうまく交差しない場合は、目標物のいづれかの測定が間違っているためなので、もう一度行いましょう。
精度が上がれば三角形も小さくない現在地を把握しやすくなります。
目標物が2つの場合は、測定の精度が悪くても必ず交わってしますので、本当の現在地と大幅にずれている可能性もあります。